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2017-06-06

地下を活用する3階建て住宅
注文建築で「地下室」のオススメ

国土が狭い日本では、限られた敷地をいかに有効活用するかが建築の大きなポイントになってきます。そこで注目されるのが地下の活用。欧米では地下室を設けることはごく普通なことであり、機械室やランドリールームなどの実用的な使われ方から、寝室やホームシアター、さらには竜巻などの自然災害時に避難するシェルターに幅広く活用されています。日本でも地下室に関する規制が一部緩和されたことで、今後は注文建築の選択肢として、存在感を増しそうです。

規制緩和により、地下室が造りやすい環境に

1994年の建築基準法の一部改正で、一定条件を満たした場合に限り、地階の床面積が容積率に算入されなくなり(合計床面積の3分の1を限度とする)、同じ建て坪の2階建ての1.5倍の広さまで建築可能になりました。例えば、広さ100m²、建ぺい率50%、容積率100%という条件の場合、1、2階だけの家ならば100m²までのところ、地下室つきならば地下室部分を50m²プラスして、合計150m²まで造ることが可能ということです。

同じような敷地の有効活用法として、3階部分を上に設ける考え方もありますが、こちらには高さ制限や斜線制限、容積率などの守るべきルールが多いため、実施できる土地に限りがあります。その点地下の場合には、地下にもう1つフロアを設けることで、地上2階、地下1階の3階建て住宅が造りやすい環境が整っているといえます。

法律的に地下室が造りやすくなったとすれば、住空間としてのメリットが多い地下室建築の選択肢も現実味を帯びてきます。
住空間として地下室が優れている点は、防音性があり静かであること。音は空気の振動を介して伝わりますが、地下室は周りが土に覆われた空間ですので、それを遮ることができるのです。
また地下室は、昔から食料やワインの貯蔵庫として活用されています。地中にあるため外気温の影響を受けにくく、年間を通じて温度が安定しているのがその理由であり、そこにも大きなメリットがあります。
さらに地震に強い造りになっているのもポイント。大地震で地上階は全壊であったのに、地下室だけは無事だったという事例もあります。海外では地下室をシェルターとして用意している家庭も少なくありません。

もちろん、地下に穴を掘って建築しなければならない分、コストが高くなること、防湿、防水、換気、採光対策などを綿密に施さなければならないことなど、デメリットもあります。しかしその対処に長けた建築家や建築会社とタッグを組むことで、解決できない問題ではなくなります。

アイデア無限! 地下室の活用方法

このように地下室には、遮音や吸音性に優れている、温度の変化があまりないといった特性があります。それを活かして、さまざまな活用方法が考えられます。

大きな音を出す趣味を楽しむ専用スペースが、その王道的な使い方だと思います。お気に入りのオーディオシステムやスクリーンを設置してホームシアターをつくる、ドラムセットやアンプを設置してミュージックスタジオ仕様にする、エアロビクスなどを行うアスレチックスタジオにするなど、防音設備さえしっかりと設えれば、周囲に気兼ねすることなく自分の世界に浸ることができます。

またワインセラーも人気の活用法のひとつ。もともとヨーロッパの古いお城などでも、ワインセラーは地下室に造られることが多く、温度変化に敏感な高級ワインなどを貯蔵しておくスペースとしては、地下室は最適なのかもしれません。

音の反響の心配がないので、子供たちが飛んだり跳ねたり遊ぶアミューズメントスペースやエキストラスペースとしてもお勧め。採光の方法を工夫すれば、明るい中でおもいっきり遊べる賑やかな場所となるはずです。

アイデア次第で使い方が無限に広がる地下室。どんな用途で造るにせよ、個人や家族、特別な仲間といった関係性の人たちと気軽に使う、カジュアルなプライベート空間になることが多いでしょう。リノベーションで後から造るという選択が難しいことから、地下室を設けるのであれば建築段階から、家族で夢を膨らませてプランを練ることをお勧めします。

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